2006年度 システム情報科学特別演習(イントロダクトリセミナー)関連技術調査レポート
3次元レーザスキャナの計測の原理
3Dレーザースキャナの概要
●3Dレーザースキャナ
3Dレーザースキャナは,レーザーによる計測対象物とセンサーの間をレーザパルスが往復する時間を計測することで距離を計測し,同時にレーザービームを発射した方向を計測することで,計測対象点の3次元座標を取得するものである.
測定原理は,レーザーが測定対象物で反射して帰ってくるまでの時間から距離を算出し,またレーザーの移動方向角度から角度を算出し,この距離・角度情報から3次元位置情報を求めている.現在,3Dレーザスキャナは,金型など工業製品の規格検査用には極めて精密な計測が可能な超短距離計測用から,やや精度の劣る長距離計測用など様々な機器が存在する.
図1 測定原理
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現在,一般的に入手可能な3Dレーザスキャナの代表的な相違点は,@計測距離(数 m〜1000m
程度まで) A計測精度(数mm〜数cm)
Bスキャン範囲などである.3Dレーザスキャナを使用して計測を行う際には,対象までの距離,対象の規模・大きさ,必要な位置精度などを考慮し,適切な機器を選択する事が必要である.
非接触で精密なデータが取得でき、調査・設計・施行など幅広い用途に使用できる.一連の作業がスピーディーであり、データの有効活用と情報活用と情報開示及び、コスト削減が期待できる.
図2 地形図 (点群データから → メッシュ、等高線を生成 → CADへ出力)
図3 600万点の点群データ
図4に用いられている適応現場、目的及び現場状況を示す.
適用現場
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目的及び現場状況
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トンネル |
トンネル内の断面図の調査 |
土 木 |
急斜面で止まった落石物の面積の調査等 |
橋 梁 |
橋梁の測量調査.地方の小さな橋梁で、設計図を市町村が管理していない場合、通常よりも簡単にCADに落とし込み可能 |
造 船 |
補修の前に船体をスキャンし、補修後の繋ぎ合わせを有効にするためのCADデータ取得 |
工 場 |
複雑なプラント構造の図面として有効 |
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図4 主な用途
レーザスキャナ測定の特徴
● 測定速度
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レーザスキャナでは、短時間に多くの地形形状を表す座標データが得られる.レーザスキャナは大別して2つの方式があって、測定速度に大きな差がある.
回転ミラー型では、毎秒5000〜30000個ほどのデータを得られる.
経緯台(パンチルトマウント)式では、1分間に100個程度のデータが得られる.
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回転ミラー型は経緯台型に比べて有効距離が短い.
さらに経緯台型は精度が高く、各種測定モードの設定ができて地形という複雑な形状の測定に適するため、これを多く使う.
● 精度
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レーザスキャナの空間座標値は、距離、水平角、垂直角の3値として得られる.
その精度は、距離精度と水平、垂直の角度精度に大きな差がある.
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距離精度
距離精度=±( 25o+距離×20ppm )
とされる。
これは、1000mの測定距離なら、
距離精度=±( 25o+1000m×20/1000000 )=±45o
となり、2000mなら±65oとなる.
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角度精度
角度精度には2つの要素がある.
1つは、経緯台の位置精度であり、もう1つはレーザビームの広がりに由来する.
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経緯台の位置精度
経緯台の水平、垂直の位置精度はカタログによって与えられている.
先の Riegl LPM-2K を例に挙げると、0.009°( 33″)である.
(LPM-2Kを制御する角度単位は、gon( Grad )で、400gon=360°である.)
( 0.009°という半端な値は、0.01gonがオリジナルである : 0.01gon = 0.009°)
0.009°は、1000m先では 16pに相当する.
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レーザビームの広がり
レーザビームは距離とともに広がって、その広がって地表に当たった、広さを持つスポットから1つの値をデータとして取得する.
広がりはビーム径として表され、1000m先でのビーム径は、1.2m程になる.
● 霧と有効距離
濃い霧の中では、測定は困難である.濃い霧どころか、人の目にはかすかなモヤにしか見えないものでも、測定可能な距離はかなり制限される.
測定可能距離の長いレーザスキャナほど、霧の影響を受ける割合が高くなる.
●測定対象の反射率と有効距離
レーザレーダは、レーザの反射光を測定して距離を得ますから、測定対象が光を全部吸収したり、鏡のように全反射して戻ってこない場合には測定できません。水面は赤外レーザを吸収して測れない例である.
水面を除いて、自然の地形の中には完全な吸収体や全反射体は少ないのですが、岩、土の色によって反射率は随分違いますし、濡れた土砂なども反射率は悪くなる.
雨の中で測定できることも、地上からのレーザスキャナ測定の特長ですが、一般に有効距離ぎりぎりになると濡れた対象は測定しにくくなる.
<参考URL>
3次元レーザースキャナ レンタルのニッケン
レーザ測定の特徴
数理設計研究所
3D-SURVEY
株式会社 地域みらい
調査担当: システム統合学研究室 植木 悠次 (提出年月日:2006年8月1日)