2006年度 システム情報科学特別演習(イントロダクトリセミナー)関連技術調査レポート
裸眼立体視の原理
1.立体視について
まず、立体視について。何かひとつのものに注目しながら右目(あるいは左目)を閉じてみると分かるように、左右の目の視点による映像の差(両眼視差)が存在する。人間が何かものを見る際、脳がこの両眼視差を利用して空間の再構築を行っており、これによって物体との距離感を得ることができる。
これを逆に利用して、左右の目でそれぞれ違う画像を見ても、それが実際の両眼視差のような関係になっていれば、その画像を立体的に認識することができる。その現象が立体視である。
また、この現象を利用して焦点をずらすことによって立体的に見ることができる画像をステレオグラムと呼ぶ。
2.ランダムドットステレオグラムとステレオペア
立体視を実現するための方法はいくつか種類がある。器具を利用せず、観察者が意図的に焦点をずらすことによって立体視を実現する方法(裸眼立体視)としては、ランダム・ドット・ステレオグラムやステレオ・ペア、カラー・フィールド・ステレオグラムと呼ばれる画像に対して焦点をずらして見る、というものがあげられる。
ランダム・ドット・ステレオグラムとは、一見したところでは無造作な点の集まりにしか見えないが、うまく焦点をずらしてやるとその中に別の立体的な映像が見える、という画像である(fig.1)。
(fig.1)
ランダム・ドット・ステレオグラム
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ステレオ・ペアは、より単純に、両眼視差の分だけずれた画像を二つ並べたもので、各々の画像を別々に見ることによって立体視を実現できる(fig.2)。
(fig.2)
ステレオ・ペア
カラー・フィールド・ステレオグラムは一見普通のパターン画像に見えるが、焦点をずらしてみることによって、その中に他の立体的な映像が見えるような画像である(fig.3)。
(fig.3)
カラー・フィールド・ステレオグラム
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3.焦点のずらしかた(平行法と交差法)
裸眼立体視を実現するには観察者が上手く焦点をずらして画像を見なければならないが、その焦点のずらし方にも二種類ある。
第一が平行法と呼ばれる方法で、ステレオ・ペアに対し、向かって右側にある画像を自分の右目で、左側にある画像を左目でみる方法である(fig.4)。
(fig.4)
平行法
第二が交差法と呼ばれる方法で、ステレオ・ペアに対して右の画像を左目で、左の画像を右目でみる、という方法である(fig.5)。
(fig.5)
交差法
交差法では両視線が交錯することになり、極度なより目で画像を見るため、一般的に平行法よりも難しいとされる。しかし交差法を利用すると、平行法よりも大きな画像に対して立体視を実現できる、といったメリットもある。
Appendix.器具を用いた立体視
上に述べた裸眼立体視では、観察者自身がいくらかの練習をしなければ立体視を実現することができないが、特殊な眼鏡などの器具を利用することによってより簡単に立体視を実現することができる。
もっとも単純な装置としては、左右の視界を仕切りで切り分け、両目の先に視差を考慮した画像をおく(絶縁隔離方式)、というものがある。このタイプではレンズを用いて実際の装置のサイズを小さくしたり、視線の先に鏡などを設けて視界を広くするなどの工夫がされたものがる。ヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD)もこのタイプにあたる。
他にも、子供雑誌の付録でついてくるような、赤と青のセロハン眼鏡を用いてひとつの画像からそれぞれの両眼視差に対応した画像を得るもの、偏向レンズを利用したものなどが存在するが、絶縁隔離方式も含めこれらの基本的な原理は、上で述べた両眼視差による立体視と変わりない。
参考文献
中原機会設計事務所 http://www2.aimnet.ne.jp/nakahara/index.html
ステレオグラム - Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AC%E3%82%AA%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%A0
そらはうたたね http://sorauta.bufsiz.jp/index.html
なお、ランダム・ドット・ステレオグラムおよびカラー・フィールド・ステレオグラムの図を作成するのに、フリーソフトStereo Pictを利用した。
調査担当: システム基礎論研究室 加藤 俊一郎 (提出年月日:2006年6月27日)