2006年度 システム情報科学特別演習(イントロダクトリセミナー)関連技術調査レポート

メッシュモデルにおけるデータ量削減技術


はじめに

 形状データのポリゴンメッシュによる表現が主流になるとともに、より複雑でデータ量の多いメッシュを扱う必要が生じている。 しかし、生成されたメッシュが膨大な数のポリゴンで構成されている場合、効率が悪く、実用的でないという問題がある。そこで、データ量を削減して 実用的なサイズのメッシュを得るために、ポリゴンメッシュから冗長な要素を取り除いて簡単化する手法について紹介する。


メッシュの簡単化

 測定機から得られる点群データによって生成された三角形メッシュに対して、以下の処理を適用して簡単化を行う。


1.特徴稜線の抽出と延長

 着目した稜線の両側の面についての二面角を評価して特徴稜線を抽出する。二面角が指定した角度よりも鋭角である場合、特徴稜線とする。  次に、稜線交換操作によって特徴稜線列を延長する。


図1

 図1(a)において、太線の稜線は特徴稜線である。三角形{Vl,Vr,Vt}および{Vl,Vu,Vr}について算出した二面角が指定した角度よりも鋭角の場合、 稜線{Vt,Vu}に対して稜線交換操作を適用する。稜線交換操作は、図1(a)における稜線{Vt,Vu}を削除し、図1(b)のように稜線をはさむ2つ のポリゴンについて向かい合う頂点を端点とする稜線{Vl,Vr}を生成する操作である。Vlが属するすべての面について以上の処理を適用する。


2.特徴頂点の抽出

 頂点に接続する特徴稜線数が1か、もしくは3以上の場合、その頂点は形状のコーナー部分であると判断し、特徴頂点とする。特徴稜線数が0の場合、 近似ガウス曲率の絶対値が閾値より大きければ、特徴頂点とする。


3.稜線縮退化によるポリゴン削減

 特徴頂点以外の頂点について、頂点に接続する稜線に対し、稜線縮退化操作を適用してポリゴン数を削減する。稜線縮退化操作は、図2のように 稜線{Vt,Vu}を端点Vuに向かって縮退させることにより、1つの頂点と2つのポリゴンを削除する操作である。


図2

  • 一般稜線の縮退化

     特徴稜線以外の一般稜線は、以下の方法で縮退させる。
     特徴稜線の接続数が0で、かつ特徴頂点でない頂点には、近似ガウス曲率が設定されている。頂点における近似ガウス曲率の絶対値が小さいほど、その 周辺で形状は滑らかで、周辺のポリゴンを削除しても形状の変化は小さいと考えられる。したがって近似ガウス曲率の絶対値が最小の頂点に接続する稜線 から順に縮退化の対象とする。

  • 特徴稜線の縮退化

     特徴稜線は以下の方法で縮退化させる。
     特徴稜線の端点で、かつ特徴頂点でない頂点に、特徴稜線上の近似曲率を設定する。近似曲率の絶対値が最小の 頂点に接続する2本の特徴稜線のうち、形状変化の少ない方の特徴稜線に対して稜線縮退化を適用し、ポリゴン数を削減する。以上の操作を近似曲率の絶 対値が最小の頂点について繰り返す。


結果例


図3

 図3はPC/AT互換機上に実装してメッシュ簡単化を行なった結果であり、(a)図は初期メッシュ、(b)(c)図はメッシュ簡単化後である。 ここで、Kは近似ガウス曲率、括弧内の数字はポリゴン数を表している。
 (b)と(c)では、平面の部分ではほぼ同程度簡単化されているのに対し、円柱状の部分において簡単化の度合いに違いが表れている。


参考文献
特徴抽出と稜線操作によるポリゴンメッシュの簡単化
http://www.ricoh.co.jp/rdc/techreport/No24/072076.pdf
調査担当: システム統合学研究室 藤原 佑介 (提出年月日:2006年8月1日)