以上のもろもろの事柄を総合して,大阪大学時代より,私は 学部の講義の成績評価では次のような ものを採用しています.
最初の座席見取り出席集計とは,講義を行う教室の 椅子の配置図を作り,それを教室に回して,学生に 自分の着席している場所に署名してもらうもの です.名前を点呼する時間を省くことができますし, 教壇から見回して座席表と比較することで,代筆,途中退席も 分かります.また,座席表をつかうことで,学生を 名指しで指名したり,後述のイエローカード制を的確に運用できます.
出席傾斜評価は,出席回数に応じて成績に加味するものです. 具体的には,次のような式を用いています.
成績評価 =(1 - a/100 × 出席回数)× 素点 + a×出席回数aは講義1回当たりの出席点です.例えば,a=2としますと,15回の講義を すべて出席すると出席点として30点がもらえます.その場合には, 試験は100点満点 を70点満点に換算して出席点と合計することになります. ですから,単位がもらえる最低ラインの60点を取るには,素点で 43点をとればよいことになります.講義に1度も出席をして いない学生は素点で60点必要です.
この評価方式は,上記の成績の主義に関して,結果主義と過程主義の 間にあります.すなわち,1度も講義に出席していなくても, 単位を取得することはできます.また,講義に真面目に出ていた 学生の試験での失敗も救済したい,という気持ちも働いています. 下に大阪大学で実施した98年度の生産工学での出席回数と素点の分布を 示しています(サンプル数119名).正の相関がかなり弱いところが 残念なところでもあります.
グラフ:98年度生産工学出席回数−試験素点分布図(大阪大学)
最後に,出席点欲しさだけで講義に出席し,他の学生の聴講の 邪魔になる学生をいかに押さえるか,ということが問題になり ます.私は「イエローカード制」と呼ぶものを導入しています. これは,講義の障害となっている行為(私語,飲食等)をしている 学生を,座席表の氏名との対応を確認した上で,イエローカード の申し渡しをし,それが累積3枚になった時点で,学期末試験の 受験を認めない(あるいは採点しない),というものです. これまでのところ,この制度によって受験資格剥奪になった 事例はありませんが,学生には,「講義に出て 真面目に受講できる自信がない人は,なまじ 講義に出てイエローカードをもらうより, 自宅で独学で勉強して単位取得を目指す方が得策である」 といってあります.
現状のところ,こうした評価法は学生にも好評で,概ね成功しているように 思いますが, まだまだ改善の余地は残っているようです.