第1章は序論です.家で言えば玄関です. 「緒論」あるいは「はじめに」 と始めることが多いです.間違って「諸論」や「猪論」と書かないでください. 第1章の役割は,
第2章では,一般に自分の研究が取り上げている分野の現状や 問題点について,文献調査等に基づいて論じるところです. ここで大事なことは,
第3章から研究の理論的な内容を記します.研究論文では 「理屈」が重要です.単に「こうしたらこうなった」と いうことではなく,
その次にくる章は,理論的内容を,実際に実験や調査, システムの実装などを通じて検証するものです. ここで大事なことは,問題の提起,理論的な提案内容と 実証的な内容との間に論理的なギャップが ないかどうかです.たとえば,
問題提起部:「A,B,..., Zの任意の組み合わせの評価が困難」 理論提案部:「A,B,...,Z の任意の組み合わせに対して成立する関係を提案」
理論実証部:「AとCの組み合わせのみついて評価」
というのは,実証部が提案理論の実証となっていないため, あきらかにギャップです.(もっとも執筆段階で どうこうなる話ではないかもしれませんが...)
また,実証の章では,必要に応じて,他の研究との 具体的な比較を行うこともあります.他の研究については第2章 でも述べていますが,そこでは自分の研究との比較はしていません. 自分の研究成果を出した後で,比較するというのが,フェアな態度です.
最後に結論を述べます.この結論が単に第1章の研究目的の語尾を 過去形にしただけの人がいますが,それではいけません. 結論ではそれまで述べてきた具体的な内容に基づいて,明確に 述べる必要があります. また,出来たことばかりではなく,できなかったこと,やり残したことも 結論の中で整理をしておくとよいでしょう. 博士論文のように大作の論文になると,各章ごとに 末尾に結論を入れた上で,結論ではそれらを総合した総まとめとした方が 理解しやすいこともあります.
あとは,参考文献,研究業績,謝辞,付録などです. 参考文献については後で詳しく述べます. 修士論文などでは,学術雑誌の掲載論文やこれまでの国内外の学術講演会での 研究発表をリストにしておくとよいでしょう.
謝辞は,ここまで学業を続けることができて,無事に卒業(修了) するにいたった幸せをかみしめましょう.支えてくれた人達への 感謝の念が自然に 湧いてくることでしょう. 付録は,論文本文に入れるには量が多かったり,煩雑だったり, 論旨からはずれやすかったりするが,研究内容をより深く理解する には 有効である,というものなどを入れます. たとえば,数式の具体的な展開,定理の証明,システム実行例, システムのリファレンスマニュアル,調査データシート,などです.
ちなみに,論文の階層構造は,
3. 章(Chapter) 3.1 節(Section) 3.1.1 項(Subsection) 3.1.1.1 目(Subsubsection)と呼びます.ですから,論文中で,3.1.1節とか, 3.1項という表現は不適切です. また,通常,階層性は項までで,それより細かな ところは,箇条書き等(TeXではdescription, itemize, enumerate等)や,番号なしの見出し (TeXではsubsubsection*など) を使うほうがうるさくなりません.
節や項,目の項目が1つしかないのは不自然ですので, そうした場合にはわざわざ節や項,目をたてることはしません. また,章を節,節を項で分割するときには,全体を分割するのが 原則です.ですので,章を節を分割したときには,章の内容は原則として どこかの節に含まれていないといけません. たとえば3章の途中から節を立てて,3.1節が3章の途中から始まるのは不適切です.