量子が守る情報

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講義担当者

富田 章久  Akihisa TOMITA

大学院情報科学研究科情報エレクトロニクス専攻 (光エレクトロニクス研究室) 教授.工学部情報エレクトロニクス学科電子情報コース担当.光子を利用した量子情報処理技術の実現に関する研究教育を行っています.特に量子暗号鍵配付システムの構築と安全性保証を進めています.さらに,量子コンピュータを現実のものにするために必要な技術である,量子もつれ(エンタングルメント)の生成・転送とその応用についての研究開発を進めています.
出生地:東京(でも札幌育ち)

HP: http://www.eng.hokudai.ac.jp/labo/hikari/qit/index.html
E-mail: tomita(atist.hokudai.ac.jp (at)は@で置き換えてください
居室: 情報科学研究科棟5階 5-02号室 電話 011-706-6521


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講義のポイント

量子と情報の融合が生み出す究極の暗号がネット社会を守る

インターネットショッピングに代表されるように,私たちにとって貴重な情報が誰もがアクセス可能な回線を流れるようになっています.情報が盗まれたり,すりかえられたりする危険,他人が自分になりすます危険を防ぐものが暗号技術です.しかし,これまで暗号技術と解読技術は終わることのないイタチごっこを繰り返してきました. 2030年にはこれまでの暗号技術を覆してしまうような解読技術が現れるかもしれません.

 量子暗号(QKD)は量子力学の原理を情報理論と組み合わせることによって,これまでにない高度な安全性を保証するものです.そのため,量子暗号は究極の暗号ともよばれています. 1つの光子が同時に2か所に存在したり,ある粒子を測定すると関係ないはずの粒子の状態が変わってしまう・・・といった,日常生活からみるとちょっと不思議な量子の世界の法則が私たちの情報を守ることとどう結びつくのでしょうか?その秘密を講義でお話しします.

 2010年の時点で,光ファイバで実際に構築されたネットワーク上のテレビ会議を量子暗号を使って暗号化することができました.(図は構築された量子暗号ネットワーク[東京QKDネットワーク]の構成を示します.) 2030年には量子と情報の融合(量子情報)がさらに進んで,便利で安心安全なネット社会の要素になっていくことを期待しています.量子暗号はどう発展していくか,量子暗号に限らず量子情報で将来どんなことができそうか,そのために今どんなことを研究しているのかも説明します.

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デモンストレーション

量子消しゴム

量子の世界の不思議さを垣間見る実験を紹介します.光子の重要な性質に干渉があります.2つに分かれた光が再び出会うとそれまでに動いた距離の差によって強められたり弱められたりする,ヤングの実験でおなじみのあれです.ところで,干渉は光子がどちらから来たかがわかる(測定する)と消えてしまいます.ところが,測定した後でもう一度どちらから来たかという情報を消すと(消しゴムで?)干渉が復活するのです.こういった情報を得ること(測定)と光子の状態の間のかかわりあいが量子情報の基本となっています.もちろん,量子暗号にもこの原理が使われています.写真は光通信用の部品で構成した量子消しゴムの実験系です.

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